10月10日
パンチャカルマDay10


今日は旧体育の日だ。
そんなことはどうでもいい。
今日はクライマックス、ヴァマナである。


昨夜は緊張からあまり眠れなかった。


この日の朝ごはんは、胃液から粘膜を守るためか
カードと呼ばれる水牛のヨーグルト(ブラウンシュガー付)と、牛乳…。

わたしは牛乳が苦手だ。
給食の牛乳は滅びたら良いと思う。
なぜ我慢して飲み続けていたのか。Noと言える小学生であればよかった。

そんな過去を逡巡しつつ、薬だと思って冷たいうちに(もちろんキンキンには冷えていない)一気飲みする。


 

 

 

 

 

 

飲み終わって、日本のそれと随分味が違うことに気が付いた。
甘くて美味しい。
そうと知っていればもうちょっと味わって飲んだのに。

カードは、ブルガリアヨーグルトのプレーン味とほぼ同じ味。
もうちょっと酸味が強いかな。
そしてけっこうなボリュームである。
ブラウンシュガーがついており、それをかけて食べても良いとのこと。

 

この日の診察とトリートメントは10時45分から。
診察はDr.Koshala。

今日はヴァマナで緊張する、夜もあまり眠れなかった、と伝えたら
『大丈夫だよ!リラックスしてればすぐ終わるから。Focus on your benefit!』と言われた。
確かに、それはそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

トリートメントの後、ピンダ(温かいハーブボールで体をポンポンする)、そしてサウナ。
トリートメントが気持ちよく、ウトウトする。
ついこの後、ヴァマナだということを忘れる。
そのぐらいが丁度よいのだろう。


サウナから出ると、Dr.Denishkaに、白いさらしのようなものを胃の下~腰に掛けてきつく巻かれる。
(ヴァマナは6~7人の前でやることになるので、ガウンがはだけるのが気になる人は捨てても良いキャミソールをこの時に着ると良いと思う。より自分がリラックスできる状態で臨むのがベスト)

ガウンを羽織り、いよいよである。


一体どんなところでやるのだろうか。
案内されるままについて行くと、調剤室の奥の部屋の扉からいったん外に出た。
すぐ右に何やら小部屋があり、そこに通される。
 

お香が炊かれ。何やら小さい石像が置いてあったり、奥の浴槽?のようなところの縁には花が飾ってある。
そして低い椅子と、その前には石の桶に黒いビニール袋が被せてあるものがあった。


そうかここに座って吐くのか。
そう思ったら急に腹が据わった。


ちなみに小部屋にはなぜかたくさん人がいた。
3人のDr、通訳の人、さっきまでマッサージしてくれていたセラピスト、わたしの後にヴァマナをする人の担当セラピストまでいた。

Dr.Denishkaが、朝食のジュースを出されるグラスに、なみなみと薄茶色い煎じ液を入れて手渡してくれる。
これはいつも飲む液体の薬の一種類では…。
いつの間にかやってきていたDr.Denishが、椅子の後ろに回っている。

さぁ、いざスタートである。


息をしたり味わっては量が飲めない。
とにかく息を止めて一気飲みである。

グラスが空くと、間髪入れずに新しくなみなみのグラスを手渡される。
また飲む。
渡される。
飲む。

恐らく350ミリちょっとはありそうなグラスを一気に4杯飲んだ。
なので1.5リットルぐらいになるはずである。
ちょうど胃の容量いっぱいぐらいだ。

かなりお腹がたぷたぷである。
こんなので吐けるのかな、吐き気は無いんだけどな、まだ飲むか…

と思ったところでコプっと何かが上がってくる気配が小さくあった。

反射的に下を向いたら、まさにマーライオン状態のはじまりである。

嘔吐自体はほぼオートマチックに起こり、全然苦しくない
胃の内容物が無い状態で、水分だけを飲んで吐くので吐瀉物も全然臭くない。
これはかなりラクだ。
もらいゲロ的に吐くのではない。

4~5回吐いた。
ほぼさっき飲んだものは出し切った位である。


吐き始めたら、おそらくDr.Denishkaがおでこを支えてくれていた。
背後にいるDr.Denishが背中を下から上にさすって、吐き出すのを手伝ってくれる。
これまた上がってくる水分が見えているのかと思うほど、手の位置や進め方が的確である。

もう一人のヴァマナ体験者は、一回目の嘔吐では吐いたものに泡は立っていなかったそうだが
わたしは最初から泡だらけのものを吐いていた。
やはり煎じ液の泡ではなく、あれは過剰なカパだったのだ。
泡がすごい大量で、ちょっと引く。


はー、と一息つく間もなく、2回戦である。
また飲む、飲む、飲む、飲…と
3.5杯で胃が苦しくて手が止まる。
吐きそうで吐けない微妙な吐き気に、呼吸がはっはっと浅くなる。
ここで吐けたらラクなのだが、吐けない以上は飲むしかない。
やってみて、ヴァマナで苦しいのはここだけであると分かった。
 

最後の0.5杯を飲み切ったところで2回目のマーライオン。
わたしの場合は嘔吐が始まるのに、1.5リットル、きっかり先ほどと同じ量が必要だった。
2回目も、ばっちり泡が立っている。

1回目と同じぐらいの回数を吐き終わったところで、もうちょっと何かが出て来そうな感じがした。
下を向くと、こぽっと赤黒いプリンのような固まりが大小1個ずつ出て来た。

なんだこれは。

読み漁った(数少ない)体験記では、せいぜい緑とか黄色のもので、それは十二指腸の汚れだとかなんだとか言ってたのに。

しかしやや朦朧としているため、あまり考えられない。
 

3回目、やるならやってやんよ!という気持ちで煎じ液の入ったピッチャーを見たが、
背後のDr.Denishが『OK、relax』とおでこに手を当て、ゆっくり目を閉じさせた。
どうやら終わりらしい。
 

涙と鼻水も出てるし、ガウンの前もはだけてすごい格好だが
終わった安堵感でいっぱいである。

ぬるい白湯を渡され、ゆっくり飲むように言われる。
しかし先ほどまでスピード勝負でガンガン飲んでいたので、つい速く飲みそうになる。
 

あらかた飲み終わると、Dr.Denishが頭や顔をマッサージしてくれる。
涙と鼻水でえらいことになっていたはずだが、構わずマッサージしてくれた。
きっとヒーリングしてくれているに違いない。
ヴァマナはきついが、超レアなDr.Denishのヒーリングを受けられると思えば
そうそう悪くないかもしれない。
 

その後、セラピストとDr.Denishkaに両腕を支えられて施術ベッドに戻る。
一度あおむけになって少し休み、その後キングココナッツジュースをゆっくり飲むように言われる。
飲むというか、すすれ、と。
これがまた美味しい。

飲み終わると、仰向けでフェイスマッサージをしてくれる。
逆流させたので、乱れたヴァータの鎮静と言ったところだろうか。

終わったらまたしばらく休み、セラピストに付き添われて部屋まで戻った。
他の処置よりだいぶその後の対応が慎重である。

 

ヴィレーチャナ、ヴァスティ、ナスヤは、ある意味受け身でも出来るパンチャカルマである。
薬を入れられて、その後にやってくる排泄したい感覚に従うだけだ。
それなりに苦しさはあるが、受け身的にそれはやり過ごせる。

しかしヴァマナは違う。

逆流させる肉体的・心理的苦痛もあるし、何より苦しくなってからも胃の容量いっぱいに飲まないと吐けない。
最後の一押し、最後の苦しいところを自分でしなければならない。
 

喉を刺激して嘔吐反射を起こすよりは、煎じ液で胃をいっぱいにして吐かせる方が
胃や喉が無駄に痙攣せず、断然その後の負担が少ないのだろうと思う。

微かな吐き気を感じつつも、煎じ液を飲み切るのが苦しい。
そこを乗り切る意志と積極性が必要なんだろうと思う。

必要度、体力、治療への積極性、最低でも11日以上の滞在。
それが揃わないと、ここでのヴァマナは行えない。

なのでメニューに組み込まれたら、『ラッキー!』ぐらいに思って挑戦してほしいと思う。


やってみて、入念に準備され、そして自分でやる胃洗浄のようなものだなと感じた。
それまでのオイルマッサージ、シロダーラ、などで体中の過剰なカパを胃に集め、それを吐き出す。
速く大量に液体を飲むのは、それも嘔吐を誘発する刺激のひとつだからだ。

しかし終わってみると、なかなかに面白い体験だった。

 

部屋に戻ると、亀の親子のタオルアートが。
とても癒された。

 

 

 

 

 

 

 


ランチの薄い野菜スープがまた美味しい。
塩味もほぼついていないぐらいだったけど、それが丁度よい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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